【電気工事士】シーケンス図を読んでみる①~排水ポンプの交互運転~

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よーすけ
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この記事では、筆者が実際に現場で出会ったシーケンス図を読んでみようと思います。

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1.今回読んでみるシーケンス図はこちら

これは某テナントビルの地下にある機械室で出会ったシーケンス図です。

排水ポンプの交互運転についての制御で、おそらくよくある制御だと思います。

もしシーケンス図の読み方が全く分からないという方は、こちらの記事を参考にしてもらえるとありがたいです。

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2.3つの部分に分解してみる

まず、いきなり読み始めてもわかりづらいので

この図を「ポンプ制御部分」「水位感知部分」「警報部分」の3つに分けてみました。

ポンプ制御部分とは、排水ポンプを動かしたり止めたりをするための回路です。

水位感知部分とは、排水槽の中の水の量を感知してポンプに命令を出す部分です。

そして警報部分とは、ポンプの故障などで排水槽が一定以上の水位になった際に、「満水」の警報を出力する部分です。

このように3つに分けることで、一つずつ解読していこうと思います。

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3.水位感知部分

まずは水位感知部分です。

図の下の方にある「排水槽」に注目です。

ここに「停止」「運転」「同時」「満水」と記載があります。

これは水位によってポンプを運転したり停止したリしていることを意味します。

その近くにあるE3、E2、E1、E4というのは電極の番号です。これで水位を感知します。

(1)電極棒について

水位を感知するのには電極棒を使用することが多いです。

よく「フロートレス(なし)スイッチ」といいます。

似たものに「フロートスイッチ」というものがありますが、ここでは説明を省略します。

フロートレス(なし)スイッチでは複数の電極棒とそこに触れる水とで回路を形成します

電極棒のイメージ

例えば3本の電極で水位を表す場合は、以下のように分類します。

この時の基準となる電極(最も長い電極)をコモンと呼ぶことがあります。この図ではE3がコモンです。

E3がどの電極と短絡するかで、命令が変わります

この命令の内容が「停止」「運転」「同時」「満水」というわけです。

図には接点の記載はありませんが、平常時はフロートなしスイッチのTc1、Tb1が閉じています。
一方、Tc1、Ta1は開いています。

電極の信号を受けたときにTc1、Ta1の接点と、Tc2、Ta2の接点が閉じるようになっています

ここのaはa接点(メーク接点)、bはb接点(ブレーク接点)、cはコモンを意味します。
詳しくはこちらの記事でも説明しています。

(2)「運転」

図のようにE3とE1が水を介して短絡したときに「運転」の信号が出ます。

(3)「同時」

図のようにE3とE4が水を介して短絡したときに「同時」の信号が出ます。

水が多いのでポンプを同時に2台動かします。

(4)「停止」

運転中に水位が下がって、E3がE2とのみ短絡していると「停止」の信号が出ます。

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4.警報部分

続いて、警報部分を見ていきます。

離れていてわかりづらいのですが、電極はもう1本あります。

基準のE3ともう1本のE1(警報部分)が短絡すると「満水」の信号を出します

このとき、フロートなしスイッチ61F-GNのTcとTaの接点が閉じ、OG(ランプ)とHX-1(リレー)に電気が流れます
(S0-S2は電源)

この先は警報盤につながると思いますが、ここでは省略されています。

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5.ポンプ制御部分

ポンプ制御部分はどうなっているか見ていきます。

「自動1号」や「自動交互」というのはポンプの運転方法の指定です。

通常は切替スイッチでいずれかを選択します。

切替スイッチ

今回の図では「切」を含めて6つのパターンがあります。

「手動1号」と「手動2号」は水位関係なしにポンプを動かすモードです。

「自動1号」と「自動2号」は水位によって1号または2号のどちらかを動かします

「自動交互」が2つありますが、1つの同じモードです。
2台のポンプを交互に運転する為の回路と、異常時に同時運転する回路を分けて記載しています。

実際の切替スイッチでは「自動交互」は1つです。

(1)自動交互運転

この回路を読むためにはフロートなしスイッチの回路を知らないといけません。

今回の制御ではオムロンのフロートなしスイッチ、61F-G2Nが使われています。(図面に記載あり)

オムロンのホームページより回路図を確認してみました。
(「61F-G2N」で検索すると商品ページが見つかると思います)

ⅰ.「運転」信号出力時

先に説明した通り、E3がコモン、水位がE1まで上がると接点のTc1-Ta1が閉じます

ここでは「自動交互」運転を選択している場合を説明します。

運転信号が出ると、①接点Tc1-Ta1が閉じて、②リレーBX-1がONになり、③接点BX-1が閉じて、④電磁接触器(コンタクタ)52-□がONになります。

こうしてポンプが運転します。

ⅱ.「停止」信号出力時

次に水位がE2以下まで下がった場合ですが、接点のTc1-Ta1は開放し、Tc1-Tb1が閉じます

電流の流れは以下のようになり、リレー10-1(ラチェットリレー)に流れます
※ラチェットリレーとは電圧印加するたびに接点が切り替わり、交互運転を実現できます。
※今回はTc1-Ta1が閉じた時点で10-1の接点は図面の位置にあるとみなしています。
※交流変電所用制御器具番号 JEM 1093では10番は順序スイッチまたはプログラム制御器としています。

そして接点10-1は逆側(図では52-)へ切り替わります

しかしBX-1に電流が流れなくなったので、ポンプは停止しています

ⅲ.「同時」信号出力時

次にポンプの排水能力以上に水位が上がった場合を考えます。

電極のE3とE4が水を介して短絡すると、「同時」運転するために接点Tc2-Ta2が閉じます

そしてリレーX-1に電流が流れ、リレーAX-1に電流が流れるようになります。

その結果、接点AX-1が閉じ、ポンプを動かす電磁接触器である52-△と52-□の回路が繋がり、2台同時運転となります。

ポンプ2台は停止信号まで同時運転をします

E3とE4が離れて、Tc2-Ta2が開放し、リレーX-1に電流が流れなくなっても、リレーAX-1は自己保持回路になっています。

そのため、接点BX-1が開放になるまで2台同時運転が続きます。

(2)自動個別運転

自動1号と自動2号も水位と運転停止は大体同じような内容となりますが、こちらは同時運転は行わないよう制御しています。

もし1号機が壊れているために、2号機のみの自動運転にしていた場合に、壊れている方を動かさなくて済みます。

下の回路は、「自動1号」にしている場合です。

水位が上がって、E3とE1が短絡し、接点のTc1-Ta1が閉じたときの電流の流れを表しています。

(3)手動運転

手動の方は単純に直接自動接触器52-△、52-□と繋がってポンプを動かせるようにした回路となります。

例として「手動1号」にした場合の回路は以下の通りです。

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6.機器について

(1)フロートなしスイッチ

主に分電盤や制御盤などの中に設置されています。

フロートレススイッチとも言います。

信号線で電極棒とつなぎ、水位によって制御するための接点を持っています。

フロートなしスイッチ

(2)電極棒・電極保持器

電極棒は長さの異なる金属の棒です。

電極保持器につないで使用します。

今回の図面ではE1~E4が電極棒にあたります。

電極棒と電極保持器(オムロンホームページより引用)

(3)リレー

リレーとはコイルに電気を流して発生した磁力により接点を開閉するものが一般的です。

今回の回路で使用しているのは、通常のリレーとラチェットリレーがあります。

今回の図面ではX-1、AX-1、BX-1、HX-1が一般型10-1がラチェットリレーにあたります。

パワーリレー(一般型)

(4)電磁開閉器

電磁開閉器は電磁接触器(コンタクタ)と熱動継電器(サーマルリレー)を組み合わせた機器です。

リレーと同じく磁力を発生させるための端子と、負荷をつなぐ接点が分かれています。

また、過電流が流れたときにコンタクタを止める為にサーマルリレーを付けることが多いです。

今回の図面では52が電磁接触器、51がサーマルリレーにあたります。

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7.まとめ

多くの給排水設備では、このように電極を用いて水槽の水位を感知し、ポンプ2台を交互運転するように制御していると思います。

分電盤にシーケンス図が保管されている場合も多いので、気になる方は読んでみるといいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

<<シーケンス図の基本についてはこちらの記事をご覧ください>>

<<より詳しく学びたい方はこちらの書籍もお勧めです>>