

高校時代、物理は全然できなくて赤点でした。
文系出身で、仕事をしながら独学でも電験三種が取れるのか、
私の体験をご紹介します。
1.電験三種とは
電験三種とは「第三種電気主任技術者試験」の通称です。
電気の知識ゼロのフリーター時代の私でも耳にしたことがあったので、聞いたことがある人もいるかもしれません。
簡単に言うと、高電圧の電気を使っている建物の電気の点検などを行う資格です。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。
この資格は、「◯◯高校の生徒が初めて難関試験に合格」「70代にして難関国家資格に合格」など、難しい資格という意味でニュースになることがあります。
電験三種は合格率が一桁%の国家資格として有名なのです。
合格率が低い理由は色々あると思いますが、一つに受験資格がなく誰でも受験できるためというのもあるでしょう。
もう一つ、過去問と同じ問題が出ないのでちゃんと理解できていないと得点できないという点もあると思います。
※近年は過去問と同様の問題が出題されるケースが増えているようです。
2.受験までの経緯
(1)電気工事施工管理技術検定の受験
電気工事会社(工事もする専門商社)に勤めていた私。
当時の私は第一種電気工事士の技能試験に不合格になってしまい、次の技能試験が1年後だったこともあり、この1年間で何か資格を取りたいと考えていました。
※現在は年に2回試験があります。
そこで私が選んだのは、「2級電気工事施工管理技士」でした。
この試験は、学科試験だけなら受験資格がなかったので、学科試験(現:第一次検定)のみを受験することにしました。
<<第一種電気工事士・電機工事施工管理技士の資格についてはこちら>>
2級電気工事施工管理技術検定はあまりテキストがなかったので、過去問集だけ購入し、わからないことがあればネットで検索していました。
すると、
ほとんど電験三種の解説ページに飛ぶのです。
勉強を続けるうちに気付いたのですが、電気工事施工管理技術検定の学科試験(現:第一次検定)の問題が、電験三種で出題される範囲と共通していたのです。(難易度は電験三種の方が高いです。)
そこで、むしろ電験三種のテキストを買ってしまおう、と行き着きます。
特にネットの情報だけでは理解できなかった、「理論」と「機械」の2科目のテキストを購入しました。
テキストがわかりやすかったこともあって、見事、2級電気工事施工管理技士の学科試験(現:第一次検定)に合格できました。
そして、ふと思いつきました。

そうだ、テキストも買っちゃったし電験三種受けてみよう
そんな軽い気持ちで電験三種の勉強を始めました。
3.1年目(理論)
(1)電気数学からやってみる
多くの学校やサイトでは、初めに「理論」から学習するのがセオリーとしています。
この「理論」で使う概念や公式の知識が、他の科目でも必要になるためです。
この「理論」は約7割が計算問題です。電卓の持ち込みができるとはいえ、この計算問題の難易度は電気工事士とは別次元と言えます。
三角関数や複素数と言った高校数学の理解が必須になるので、自信のない人は数学の復習が必要になります。
私も文系出身で数学が苦手だったので、まずは数学の復習から始めることにしました。
Amazonでも評価の高かったこちらの本を購入しました。
ネットの口コミでは「この内容が理解できないと受験は諦めた方が良い」という厳しいことを言ってる人もいましたが、私もそれはあながち間違いではないなとも思います。それくらいここに書かれている内容は試験問題と比較すると基礎の基礎です。
そのため高校までの数学に自信がある人には不要だと思います。
(2)機械を諦める
電験三種は科目合格制度というものがあります。これは、4科目のうち合格した科目については以後2年免除されるという制度です。つまり、3年間で4科目合格できれば試験合格となるわけです。
※注:当時は連続2回ですが現在は最大連続5回です
私の場合は、仕事も忙しく、まとまった勉強時間を作るのが難しかったので、1度に4科目ではなく、2年で4科目合格を目指すことにしました。
まず1年目は、全ての科目の基礎とされる「理論」と、最も難しいとされている「機械」の2科目を受けることにします。「機械」を1年目に選んだのは、最も難しいということで、不合格になってもその後2回挑戦できるためです。
※注:現在は5回挑戦できることになります。
しかしこの「機械」の受験はあっけなく諦めることになりました。
問題集を3周、過去問も10年分を3周することを目安にしてたのですが、正直、理論の勉強だけで精一杯でした。
ここで方針転換を迫られます。
繰り返しになりますが、電験三種の科目合格は3年間のみ有効です。
ということは、毎年1科目ずつ合格ではダメで、3年かけたとしても、どこかで2科目合格しないといけません。
最後に2科目残るのは精神的にきついです・・・。
そこで1年目にこの理論に合格し、2年目に2科目(電力と機械)合格し、3年目に1科目(法規)合格することを目指すことにしました。
| 科目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
| 理論 | 合格 | 免除 | 免除 |
| 電力 | — | 合格 | 免除 |
| 機械 | — | 合格 | 免除 |
| 法規 | — | — | 合格 |
(3) ホントに難しいと感じる日々
理論では電界の強さや、磁界の強さ、インピーダンスなど目に見えない情報を頼りに問題を解かなければなりません。
目に見えないものを明らかにする物理学者は本当にすごいと思います。
おまけに約7割が計算問題で数学が苦手な人は苦労します。
さらに計算には四則演算だけではなく、三角関数や複素数といった、高校数学の知識が必要なので、難易度が高いのです。
テキストと問題集はTACのものを使用しました。
評判通りカラーで見やすく、解説も丁寧です。
本番ではより難しい問題が出題される可能性もあり、「これだけでは受からない」というレビューもありました。
しかし6割正答を目指すのであれば、このテキスト・問題集をベースに過去問を解けばなんとか合格に必要な知識が得られるのではないかと思います。
過去問も同じシリーズを使用しました。こちらは4科目がセットになって10年分収録されています。
過去問は3周しても合格基準である60点に満たないこともあり、かなり焦ります。
もともと仕事に必要ない資格であることもあって、今回不合格ならこの資格は諦めようとさえ思っていました。
当時は無かったのですが、現在はこのTACのテキストには苦手科目がある人向けの「実践問題集」というオリジナル問題を収録したテキストがあるようです。
テキスト→問題集→過去問の流れで途中でつまずく人にはこちらの実践問題集を解いてみるのも良いかもしれません。
(4)ハラハラの当日と結果
試験当日、1限目の理論ですが教室には1/3ほどの人しかいませんでした。それだけ科目合格者が多い試験ということでしょう。
聞いていた通り見たことのない問題で絶望しましたが、何とかわかる問題もあり、試験終了。
試験後の自己採点はなんと・・・
60点!!
合格基準が60点なのでギリギリです。合格発表までドキドキです・・・
発表は約1ヶ月後。ネットで結果を見ると・・・

見事合格!!!
他の試験よりも大変でしたし、もちろん嬉しかったです。
しかし一方で、
「これであと2年はしっかり勉強しなければならなくなった」という恐怖もありました。
3年目に4科目合格できずに、この苦手な「理論」を再度受験するなんてことにならないように、これから頑張らなければなりません。
「理論」は数学の試験だと思った方が良い
文系出身にとって最も難関の科目かもしれない
イメージしにくいからこそ、図を書いて問題を解く
4.2年目(電力・機械)
(1)何がなんでも2科目合格を
理論の合格から約4ヶ月後、2級電気工事施工管理技士の実技試験(現:第二次検定)がありました。
この資格は仕事に直接関係するので取得したかったのです。
そのため本格的に電験三種の勉強を始めたのは、施工管理技士の試験の終わった2月頃から。試験まで半年ほどです。
理論でかなり苦労していたので、決して舐めていたわけではありません。
ただ、このあたりで施工管理技士の資格を取っておきたかったのです。
こうして少し遅れて電験三種の勉強に取り組むのですが、この年はとても重要です。
何がなんでも2科目合格をしなければなりません。3年目に2科目残るのは精神的にキツイので・・・
(2)機械は公式をあてはめていく
機械についてもTACのテキスト・問題集を使いました。
「機械」については4機(直流機・同期機・誘導機・変圧器)のウエイトが全体の出題数の約半分と多くを占めていて、ここを押さえることが大切になります。
似ていてややこしくなるのですが、やっているうちにこの問題ならこの公式を使う、というようにすぐわかってきます。
理論と比べても範囲が広く、覚える公式が多い印象です。一方で、その公式に当てはめれば答えが出る、という問題が多く感じました。
また、4割は暗記問題と、理論よりは計算問題が少なめです。
そのため苦手な計算が理論より少なく、1問にかける時間も短くなった気がします。
「機械」ではその名の通り、電気というより電気を使ったモノについて出題されます。トランジスタ、演算処理などこれまでと違うアプローチが必要な問題も多いです。
4機の理解を優先したこともあり、過去問を解いていても他の分野の問題はボロボロでした。
過去問については、理論では10年分を2周できたのですが、機械では8年分を1周しかできず不安が残ります。
(3)電力は文系向き
電力についてもTACのテキストを使用しました。
電力の問題は約半分が知識問題で、火力・水力・原子力など発電所についてや、送配電線についての知識を問う問題が多いです。
暗記問題は範囲が広く、逆に計算問題は出題パターンがある程度絞られるので、短絡電流や地絡電流の計算などの頻出の計算問題を押さえておくと得点源になりそうです。
電力は4科目の中では比較的易しい科目とされています。
そのため2科目を同時に勉強しているのですが、優先順位は機械の方が上です。
来年、法規と機械の受験になるより、法規と電力の方がまだ負担が軽そうだからです。(この時点では想像ですが、実際その通りだと思います)
過去問については、電力もあまり解けず6年分を1周しか解けませんでした。
暗記問題が多く文系向きではあるのですが、それはつまり覚えることが多いということ。
この時改めて計算問題の方が公式を覚えていれば色々な問題に対応できる点が良いなと思いました。
(3)ネットがある時代でよかった
実務が経験豊富な人を除いて、設備そのものを見たことがない人が多いと思います。
例えば機械では誘導電動機やトランジスタ、電力でも発電所の原理など、テキストだけではイメージしにくいと思います。
そんな時はネットで検索すると色んなページがヒットします。
メーカーだったり、電力会社だったり、丁寧な説明でとても参考になりました。
あまりないと思いますが内容がテキストと違っていたら、テキストや問題集の方を信頼します。
(4)手応えを感じる当日と結果
そして準備不足で迎えた当日。
ペーパーテストの鉄則、わからない問題は飛ばし、できる(できそうな)問題に時間をかける、を徹底しました。
自信のなかった電力では、奇跡的にわかる問題ばかりでした。
過去問通りの問題が多かった印象です。
これは合格基準を超えられそうだと思いながら終了します。
そしてどちらかと言えばまだ自信あった機械は、自信を持って解ける問題は少なかったです。しかし問題の内容から公式が頭に浮かぶので、とりあえず公式に当てはめます。
すると導かれた数値が選択肢にある。
それっぽく回答したけど自信はない、そんな感じで終了します。
終わったその日に速報で自己採点すると・・・
電力75点!!
機械65点!!
もし1問くらい間違いがあってもこれならどちらも合格できそう、という感じです。
そして迎えた合格発表では・・・

見事、2科目合格!!
理論ほど勉強できていなかったのですが、問題にも恵まれ見事合格できました。
これで残すは法規のみとなりました。
公式覚えていれば解ける問題もある
電力は頻出の計算問題、機械は4機の問題を解けるようにする
実物がイメージできないものは動画やサイトを活用する
5.3年目(法規)
(1)なぜか気持ちに余裕がある
ここで合格できなければ、あれほど苦労した「理論」が復活してしまいます。
しかしなぜか気持ちに余裕がありました。
その理由はいくつか考えられます
・暗記科目に自信がある
・この1年間、他に受ける予定の試験がない
・ここまでは苦労したが結果が出ている
法規は約6割が暗記問題です。計算問題もありますが、理論のような複雑な計算が必要になることはあまりありません。
そんな気持ちのゆるみから、しばらく勉強しない日々が続くこともありました。
(2)便利なアプリで勉強
今回もTACのテキスト・問題集を使用しました。
「電気事業法」から始まり、ボリュームのある「電気設備技術基準(電気設備に関する技術基準を定める省令)」の説明では、この法律の内容を実務向けにまとめた、「電気設備の技術基準の解釈」を併記して理解しやすいように工夫されています。
法律の勉強は、似たような言葉や馴染みのない言葉が使われていて、読みにくく感じることがあります。
しかしここは電気の仕事をしている身としては、実務的にも理解しておく必要があるので頑張ります。
暗記科目のいい点は、スキマ時間の勉強がしやすい点です。
たまたま便利なアプリを発見したので使ってみたところ、これがかなり活躍してくれました。
無料で使えるのは一部で、全ての範囲を学ぶには有料なのですがトータルでも720円で済みました。
(2022年8月時点)
テキスト・問題集をやったあと、直前期の追い込みでアプリを頻繁に利用しましたが、テキストに記載のない部分もカバーできたのでよかったです。
(3)落ち着いて受験できた当日と結果
条文を丸暗記している訳でないので、うる覚えの箇所が出たらもちろんアウトです。
ただ、文系出身の方ならこの法規の試験は落ち着いて受けられるはずです。
条文の穴埋めや正誤問題など、主に社会科などで馴染みのある種類の問題が多いです。
そして、あいまいな部分を考慮しても、おそらく合格基準超えているはず、という感じで終了しました。
当日の自己採点の結果は…
81点!!
これまでの科目と比較して1番高い点数を取ることができました。
前述のようになぜか余裕な気持ちがあったので、喜びというより安堵の気持ちが大きかったです。
これでもう勉強しなくて済む・・・
正式な発表画面でも無事合格してました。

ちなみに、合格後は免状交付に手数料が取られます。
※現在の免状申請費用は2,350円
法規は暗記科目(穴埋め問題対策)
ただし頻出の計算問題は押さえておく(電力計算や電線の荷重など)
暗記はアプリが使いやすい
6.学習について振り返る
ここまで来られたのはやはり「勉強する習慣ができた」からにほかならないです。
私は「study plus」というアプリを使用していました。
同じ目標を持っている人の勉強記録も見られるので、「この人もこんなに勉強してる・・・」といい刺激になりました。
アプリで勉強時間を記録し、カレンダーにチェックが埋まっていく感じは、歯抜けになると強い罪悪感を感じるようになりました。
たぶんダイエットや筋トレも同じですが、やらないと落ち着かないレベルになると目標達成に近づくのではないでしょうか。

ちなみにこちらのアプリの記録をもとに学習時間をまとめました。その他、外出先で自分で書いたノートアプリを見ることもありましたが、その時間は含んでいません。
| 科目 | 学習時間 |
| 理論 | 230時間 |
| 電力 | 41時間 |
| 機械 | 107時間 |
| 法規 | 100時間 |
| 4科目計 | 478時間 |
電験三種合格に必要な学習時間について、1000時間必要など色々情報はありますが、私の場合はスキマ時間を加味しても500時間程度だったと言えそうです。
電験三種の学習では初めてiPadとApple Pencilを使用しました。これが思いのほか良かったのでご紹介します。
ノートアプリはGoodNotesというアプリを使用したのですが、このアプリの使いやすさには感動しました。
紙のノートと比べて色分け、書き直し、図の描画が断然楽ですし、ノート内の検索も可能です。
慣れるまでペンが滑って書きにくいかもしれませんが、そのうち慣れます。
紙やペンを買う必要もなく、手が汚れる心配がありません。
iPhoneユーザーなら同期できるので、外出先で確認することもできます。
有料なのですが、買い切りなので高いとは思いません。
私が購入した当時は980円だったのですが、今では4080円もするようです…
無料版もあるようなので、使ってみて気に入ったら購入というのが良さそうです。
GoodNotesについては、こちらのサイトでわかりやすく説明されています。(外部サイト)
7.これからについて考える
そしてこれからについて考えます。
当初は「箔が付く」から欲しかった電験三種という称号。
案の定、私の周囲からの反応は、
「すごい」
「おれには絶対無理」
「会社辞めるの?」
など驚かれました。
ただ、いざ合格してしまうと、なんかあっけない気持ちになり、ここがゴールという気にもなりません。
(ちなみに私は会社の経営陣からは一切評価されませんでしたが、会社によっては手当もあります)
もちろん同じことをもう一度やれと言われれば辛いのですが、終わったら気持ちは次へ向かうものです。
この後の道としては色々考えられます。
・電験2種を取って特別高圧の道*1
・転職して選任の主任技術者に
・独立して外部委託の道へ*2
*1 特別高圧…電圧が2万ボルト超の設備。3種で従事できる規模は5万ボルトまでだが2種は14万ボルトまで従事可能になる。
*2 独立して個人で働くことができるが、資格を持っていることに加え、実務経験が必要。
これからについてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
電験三種を受験してみて・・・
勉強を習慣化できれば合格に近づく
科目合格制度で「文系出身・仕事しながら」でも合格が狙える
資格を取っただけでは何も変わらない
<<電気主任技術者の資格について詳しくはこちら>>





