

静電気のビリっていうの、すごく嫌だなー。
静電気なくならないかなぁ。

それは難しいなぁ。静電気は自然界に必ず存在するんだ。
なくすことはできないんだけど、対策はあるよ。
少し詳しく見ていこう。
静電気はなぜできるのか?
静電気の悪影響は?
静電気を防ぐにはどうする?
1.静電気とは?
(1)原子の構造
あらゆるものは原子で構成されていて、原子には原子核と電子から成り立っています。
原子核はさらに陽子と中性子に分類できます。この陽子と電子は電荷を帯びていて、陽子はプラス、電子はマイナスの電荷を帯びています。
※電荷・・・電気の量のこと

通常は陽子と電子の数は同じで、プラスマイナスが釣り合った状態になっています。
原子が他の原子と近づいたり接触したりすることで電子が移動します。このように電子が移動することで、プラスとマイナスが釣り合わなくなる状態を帯電するといいます。
電子を失った方はマイナスが減ってプラスが多くなるので、プラスに帯電します。電子を受け取った方はマイナスに帯電します。

このように不安定な状態の電荷を帯びた状態(帯電している状態)は動かない電気のため、静電気と呼ばれます。
(2)静電気の発生原理
ⅰ.接触帯電
物体が接触することによって電子が移動し、電子が減った方はプラスに、電子が増えた方はマイナスに帯電することで静電気が発生します。
接触帯電は摩擦帯電に比べると微量の電荷ですが、そこから接触帯電など大きな静電気の発生につながることもあります。

ⅱ.摩擦帯電
物質の摩擦によっておこる帯電を摩擦帯電といいます。摩擦帯電は異なった物質同士でのみ発生します。

または同じ物質でも大きさが異なったり表面が異なった条件で発生します。これを非対称摩擦といいます。
雲の中の大きさの異なった氷の粒子が摩擦により静電気放電するのが非対称摩擦による雷の発生です。
ⅲ.剥離帯電
粘着テープをはがすときや、フィルムをはがす時等、接触している物体を剥離するときに帯電することを剥離帯電といいます。

剥離帯電はによって発生する電荷の量ははがす速度に比例します。スマホの保護シートを素早く剥がしてしまうと静電気でホコリが吸い付きます。ゆっくりはがすように注意されるのはこのためです。
ⅳ.誘導帯電
通常、静電気は絶縁体(電気を通さないもの)に発生します。導体(電気を通すもの)の場合は電荷は溜まらずに空気中に放出するからです。
しかし導体の場合も誘導帯電という形で帯電します。
例えばマイナスに帯電した物質Aがあるとします。そこに導体が近づきます。すると導体の中のプラスの電荷が物質Aの近くに寄っていき、マイナスの電荷が物質Aと反対側へ移動します。導体内部の電荷が片側に偏った不安定な状態になっていて帯電した状態になります。この状態で別の物質に触れると放電が起こります。

(3)帯電列
物質によってプラスに帯電しやすいものとマイナスに帯電しやすいものがあります。それらをまとめた帯電列というものがあります。

人体はプラスに帯電しやすく、ポリエステルはマイナスに帯電しやすいです。この特性が離れている物質同士では摩擦の際に帯電しやすくなります。
冬場はなるべくポリエステルの服を着ない方が静電気の発生を抑えられるというわけです。
マイナスに帯電しやすいものでも、この表で右寄りの物質と接触すればプラスに帯電することになります。例えばポリエステルは触れる相手がビニルであれば、プラスに帯電することになります。
ただし、湿度や温度、摩擦するものの形状や表面状態など状況によってはこの帯電列のとおりにならない場合もあります。
2.静電気の特性
(1)電界
帯電した電荷には近くにあるモノに影響を与える空間があり、それを電界と呼んでいます。

似た概念に磁界というのがあり、こちらは砂鉄の中に磁石を置くと砂鉄が吸い付く範囲があります。
電界も近くに別の電荷があると吸い寄せたり引き離したりします。この吸引力や排斥力の大きさと向きを電界の強さといいます。
この電界の強さをE[V/m] として、その電界中に大きさq[C] の電荷を置いた時、電荷に働く力F[N] は以下の式で表します。

E:電界の強さ [V/m(ボルト毎メートル)]
この電荷に働く力F[N] のことをクーロン力といい、電界中の電荷Q1と別の電荷Q2に働く力はクーロンの法則で以下の式で表します。

ε0:真空の誘電率(≒8.85×10-12) r:電荷間の距離

導電率とは電気の通しやすさを表しています。導電率は空気中は真空と同じと考えるので一定として計算できます。
また、公式よりクーロン力は距離の二乗に反比例します。吸引力や排斥力は中心の点電荷から離れれば離れるほど弱まることを意味します。
自分か、触れるモノがたくさんの電荷を帯びていれば大きな力が生まれるし、自分とそのモノの距離が近くなれば大きな力が発生するということです。
また、ガウスの定理というものがあり、面電荷(単位面積あたりの電荷量)と電界の強さの関係は以下の式で表せます。

σ:面電荷[C/m2(平方メートル毎クーロン) ε0:真空の誘電率(≒8.85×10-12)

この時、電界の強さは面電荷σに比例します。言い換えると、電界の強さは電荷の量が同じなら、面積に反比例するのです。
これは先端がとがったものの場合は電界が強くなることを示してます。
静電気でバチッと感じるのは指先からモノに触れた時ではないでしょうか?
このときは電荷が先端に集中するので、大きな力が発生するのです。
(2)静電容量
静電気に関係するものに静電容量というものがあります。
これはコップと水で例えると、水の量は電荷量、水面の高さが電位、コップの底の面積(太さ)が静電容量になります。

電荷量と静電容量の関係を表す式は以下の通り。

C:静電容量[F(ファラド)] V:電位差(電圧)[V(ボルト)]
多くの電荷を蓄えるには、大きな静電容量が必要となります。
また、電荷が増える時には電位(電圧)が上がることを意味します。
そしてその電荷が放出されるときのエネルギーを静電エネルギーと言います。

C:静電容量[F(ファラド)] V:電位差(電圧)[V(ボルト)]
静電容量は物質によりある程度決まっていて、人体の静電容量は70~200pF と言われています。(pピコは10の-12乗)
また、ドアノブに触れた時の静電気の電位は3kV 程度と言われています。
先の式に当てはめると、
\(W=\displaystyle\frac{1}{2}×100×10^{-12}×(3×10^3)^2\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}×100×10^{-12}×9×10^6\)
\(=450×10^{-6}\)
\(=0.45\) [mJ]
あのパチッという嫌な感じの静電気の静電エネルギーは0.45mJ(ミリジュール)だという計算結果になりました。
3.静電気の危険性
(1)人体への影響
静電気を感じたことがない人はおそらくいないので、改めて説明するまでもないと思います。
静電気はとても不快です。
ところで人体に悪影響はないのでしょうか。
産業安全研究所の公表している資料では人体への影響は以下の通りです。
| 人体の電撃電位(kV) | 電撃の強さ |
|---|---|
| 1.0 | まったく感じない |
| 2.0 | 指の外側に感じるが痛まない |
| 3.0 | 針で刺された感じを受け、チクリと痛む |
| 5.0 | 手のひらから前腕まで痛む |
| 6.0 | 指が強く痛み、後腕が重く感じる |
| 7.0 | 指、手のひらに強い痛みとしびれを感じる |
| 8.0 | 手のひらから前腕までしびれた感じを受ける |
| 9.0 | 手首が強く痛み、手がしびれた感じを受ける |
| 10.0 | 手全体に痛みと電気が流れた感じを受ける |
| 11.0 | 指が強くしびれ、手全体に強い電撃を感じる |
| 12.0 | 手全体に強打された感じを受ける |
「チクリとした痛みを感じる」レベルで帯電電位は 3kV、暗闇で青白い光が見える状態だと、10kV 以上です。1kV だとほとんど感じることはありません。
先ほどの計算から人体の帯電電位が3kVの場合の静電エネルギーは0.45mJでした。
人体からの放電は一瞬のことで継続して電流が流れることがないので、電撃によるけいれんや心室細動が起こることはまずありません。
しかし電撃を感じて反射的に手を動かすなどで二次的な災害の危険性はあります。代表的なのは転落・転倒や機器の誤動作などの事故です。
(2)火災の要因
防災白書によると、令和4年の危険物施設における火災において、226件のうち38件が静電気火花とされています。
危険物施設とは身近なところでガソリンスタンドや、そのほかに危険物を製造する場所や貯蔵する場所を含みます。
そのため、一般の住宅や店舗などでは静電気で火災を起こすような物質はないかもしれません。
危険物施設で扱う可燃性ガスには最小着火エネルギーというものが設定されています。
例えばガソリンの最小着火エネルギーは0.2mJとされています。
先の計算で人体の帯電による静電エネルギーは0.45mJと試算しました。
これはガソリンを引火させるのに十分なエネルギーだといえるのです。。
そのため、セルフ式のガソリンスタンドには人体に帯電した静電気を放電させるための「静電気除去パット」があります。
利用する方はいつも使っていると思いますが、これは事故防止に大切なことなのです。

人体がチクッと痛むくらいの静電気も、周囲の環境によっては取り返しのつかない事故に繋がることもあるのです。
4.静電気の対策
(1)静電気の発生を抑える
静電気の発生はゼロには出来ないのですが、少しでも抑えるために効果的なことはあります。
対策が必要な現場では、以下のような対策をしています。
・湿度を調整する
一般的に相対湿度が65%以上であれば静電気の発生が抑えられるといわれていて、静電気が発生しても空気中の水分に逃げていくので帯電しにくくなります。
・帯電防止剤をつかう
界面活性剤には空気中の水分を付着する働きがあるので表面に塗ることで膜を作り電荷の通り道をつくることで帯電を防ぎます。
(2)放電する
静電気の発生を抑えるのには限界があるので、帯電している状態から電荷を逃がすことが有効になります。
ⅰ.リストラップ

導体であれば接地する(大地と繋ぐ)ことが効果的です。人体についても導体と近い性質があるので、人体を接地することで静電気の影響を防ぐことできます。
人体を直接接地してしまう方法で代表的なものにリストラップというものがあります。
これは作業員の手首に取り付けて、伸びている配線を接地することで使用します。
Ⅱ.イオナイザー(除電器)

除電器は電気的に偏ってしまった物体に対して、逆極性のイオンを発生させることで電気的に中和させる装置です。
イオナイザーの放電方式には、帯電体に尖った先端を近づけて、電界強度の高まった先端で放電を起こす「自己放電式」と、先端に高電圧 (3kV以上 )を印加することで強制的に放電を起こす「電圧印加式」があります。
自己放電式は電気を使わないので導入しやすい反面、放電の精度としては電圧印加式の方が高いという特徴があります。
ⅲ.日常で使用できる放電アイテム
必ずしも静電気の発生が致命的になる環境ではなくても、日常で静電気のストレスを減らしたい人には一般用のアイテムもあります。
こちらは服などに直接吹きかけることで静電気の発生を抑える商品です。
先に説明したように、界面活性剤は空気中の水分を吸い付ける効果があり、その水分に電荷が逃げていくので静電気が溜まるのを防ぎます。
ガソリンスタンドにあるような手を触れれば除電ができるシートで、磁石でくっ付けておくタイプです。
車のドアや部屋のドアなど触れて静電気が起きやすいところの近くに貼って使います
原理としては、電気が流れにくい素材(絶縁体)と流れやすい素材(導電体)を組み合わせて、体内の電荷をゆっくり放電するようにしています。
こちらも触れると放電する素材で、キーホルダーになっているので持ち運びできます。
自らを放電させるのではなく、触れる対象物の放電が目的です。
放電すると光るという面白い仕組みになっています。
5.まとめ
私たちの世界は原子で構成されていて、原子は電子を持っています。つまり静電気はどこにでも存在します。
静電気が起きないようにすることは不可能なので、その上で対策することが大切になります。
この記事の内容が、皆様の静電気ライフに活用出来れば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
静電気は物体と物体が接近・接触することで自然と発生する
静電気は人体への影響は限定的だが、事故や火災など大きな影響が出ることもある
静電気対策に最も効果的なのは大地へ放電(接地)すること
